芋蔓読書

はてなダイアリーから引っ越しました

河合隼雄全対話〈10〉心の科学と宗教



タイトルどおり対談集。

どんどん引用します。

立花隆:これは宇宙飛行士の中のひとり、ギプスンという人が言っていることでもあるけれども、科学というのは結局無知を別の次元の無知に置きかえているにすぎない。


脚本家の山田太一との対談で、山田太一が「ある時期からハコ書きをつくるとドラマを書いている楽しみがなくなる」と言っている。

河合:ハコ書きの構成は、心の表層のアレンジですが、もっと心が深く関係してくるほど、イメージが先行してくるんです。パッと浮かんだシーンだけ出してもドラマにならないから、表層の部分で辻褄を合わせて書かなければいかん。そこが面白いわけですね。
山田太一:そうです。ハコ書きどおりだと深いところからの活気が生まれない。


おお!これが、私が以前「マンガの創り方」で感じたことだ!
やっぱりそうなんだ〜。


山折哲雄先生との対談

河合:ぼくはこう思うんです。一つには”この世に生きている”というのがある。この世とは近代自我が作り上げたカルチャーの中、つまり自然科学を応用し、自然科学的な意識を伝達しながら生きている。それからもう一つ、非常に深い意識をどこかで持ちながら生きている。両方できないとだめなわけですね。
インドのヨーガ行者は、近代自我は捨てている。逆に彼が近代人として生きるのは難しい。しかし、ダライ・ラマは、たいした人ですね。


そうなんです!私は悟りも出家もまだ目指す気はない。


伊東俊太郎先生との対談。
これがおもしろい!伊東先生を今知りましたが、いろいろ読んでみたい!
「おとなになること」とはどういうことかの探求を目的として読書を進めているわけですが、「おとなになること」がどういうことかわかった!
これを読んで分かったわけではなくて、ずっと前から分かっていたことで、たまたまここに「これだ!」というフレーズをみつけただけですが。
全ての河合先生の著作で言われていることと言っても過言でなく、フレーズ自体もこれまでに何回もでてきたと思いますが・・・
それが何かというと、
「全人的というか全体的な生き方」
です。
と言ったところで、上記の立花隆との対談にでてくるように、
「別の次元の無知」になっただけで、分からないことに変わりはないわけですが。
全人的な生き方っていうのは、むしろ子供のときの方が達成されてたのでは?と思うけど、それは、河合先生が「10〜14歳くらいで一旦人として完成する」といわれるのと一致すると思う。
第二次性徴後、性欲とか生殖とかとどう付き合っていくのかというところで、また全人感が損なわれるんじゃないでしょうか?
それでいけば、
結婚・出産が「大人」のバロメーターになる、という一般的な感覚も分かる。
生殖適齢期後に「中年クライシス」が起こる、という事例も分かる。
前に書いた、夫婦が宗教の入り口、というのも分かるような分からんような・・・。
(「全人的な生き方」に到達するための手段の一つもしくは一部が宗教だということは確かだと思う)
・・・同じ流れに位置づけることができてなんとなくスッキリしただけで、知はひとつも増えてないか・・・
全人的な生き方についてのくだりは下記のとおり。

伊東:現代は深層の多様性と表層の統一性とが共存していけるだろうと思うんです。
伊東:宗教と言うものは教義じゃない、やはり根本的な体験だと思いますね。
河合:たしかに言われるように全人的というか全体的な生き方というか、そういうことが大事になってきています。
伊東:問題は、よりよく生きるとはどういうことなのかということです。よりよく生きるということは、近代世界が忘れていた深層界−つまり別のことばでいえば自己を超えたもの、前の図でいえばこころ、エゴのところではなく、その背面世界(kinakoの注:無意識と暗在系のこと)−を謙虚に認めてそれを素直に受け入れてゆくということではないでしょうか。そのことにひょってわれわれの生はもっと広いものになる。自分だけにこだわり、自我という狭い殻に閉じこもって、それでがんじがらめになっているよりも、もっとふうっと自我を拡大してみる。本当の意味での生の充実というのは、そこまで広げることによってできるのじゃないか。そこで初めて、ものと心の乖離のない世界、今日しばしば問題になっている理性と心情が分裂しない生−これが21世紀が求めている新しい目標でしょうが−という問題と種京都科学の問題が結びつく気がするんです。
伊東:「ストーリー」というのはほんとうに面白いし、重要な全人的なものなのですね。

これも伊藤先生との対談。

河合:ユングがいってることで、「面白いのは、自分の考えは新しいことはない、と言っていることです。先駆者の第一は『易経』で、『易経』は同時性の宝庫である、だから自分がこと新しく言っているのではない、とはっきり言っていますね。


いやはやおもしろいです。
伊東先生に興味がでてきたので、伊藤先生の著書を読んでみたい。
あと、上田閑照が対談の中で、ミラーの「多神教」の後書として河合先生が一神論と多神論について書いているのがおもしろい、と言っていたので読みたい。

―――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――


伊東先生の対談を読みたい!
〜芋蔓〜「日本文化を語る」へ〜
〜芋蔓〜「日本人の心」へ〜