芋蔓読書

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悪意の手記

 

佐世保の女子高生殺人事件なんかで、「心の闇」ということがよく言われるけど、そんなものは本当はないんじゃないだろうか、と思った。家庭環境に問題があったのかもしれない。でも、似たような環境は日本中にいっぱいあるだろうけど、そこで育った子供は猟奇殺人事件なんて普通起こさない。

神戸のサカキバラ事件では、家庭環境に問題があった、「夕食のメニューがカレーライスとさばの味噌煮ですよ?ありえないでしょ!」みたいなこと言われてて、ほっとけよ、むしろ庶民としてフツーでしょ、と思ったことを覚えている。

つまり、一般人に理解できる動機や原因なんてない、というケースもあるんじゃないですか?と。

もちろん、原因の究明と対策の検討を怠ってはいけない。

ただ、家庭を含めた周囲に原因を求めることが不適切なケースもあり、とりあえず親に原因の一端を求めるという風潮は、普通の親御さんたちがかわいそうすぎる。

また、原因を本人自身に求めて対策云々ということを突き詰めすぎると、ロボトミー方面にしか行き着かないのではないか。

千年に1度の津波への対策をどうするかというのと同じように、防波堤を頑丈に高く長くするのとは別の対策を考えないといけない場合もあるのではないか。


なんてことをとりとめもなく考えていた時に、下記のインタビューを読んだ。

www.webdoku.jp

 

(小学生の間は)人が嫌いだったし、世の中が好きじゃなかったし、家もよくなかったし何も頼るところがないので、自分の中に神みたいな架空の存在を作って、それと一緒に生きている気分でいました。神戸の連続児童殺傷事件の犯人も自分の中に神を作っていたんですよね。僕は中学に入った頃にその存在が自然と離れていったのでよかったです。彼は14歳までそれでいってしまったから。

 

著作リストをパラパラみていると、「悪意の手記」という作品がある。

たいした理由もなく親友を殺してしまい、そのことについてこれといってどうするでもなく普通に(?)生活している人の話らしい。

中学生まではサカキバラ君と似たところがあったかも、という作家が書いたというので、これは読まねば!と読んだのだけど・・・どうしてこういう設定にしたのかな?

動機のはっきりしない殺人を犯した人(主人公)は、過去に「死に至る病に冒されたものの、奇跡的に一命を取り留めた(amazonあらすじより)」というわりと特殊な経験をもっている。その結果として、ものすごくわかりやすい「心の闇」がある。

そうすると、一般人には理解できないような殺人を起こしたのは、その特殊事情のせいである、ということになってしまう。

やっぱり、猟奇殺人のような特殊な事件の背景には個々の特殊事情と「心の闇」がある、という認識なのかな。著者が「自分の中に神みたいな架空の存在を作っ」た背景(「家もよくなかった」)にも、何か一般的・普通とは違うことがあったのでしょうか。

私としては、ごく普通に育ち、わかりやすい心の闇がない人が猟奇殺人(のような奇行)を犯すことはないのか、犯すとき、心の中がどうなってるのかを知りたい。

 

 

さて、冒頭の佐世保女子高生事件ですが、ネット上のその後の記事を抜粋。

重度の自閉症スペクトラム障害ASD)、重度の共感性障害、周辺環境も影響となっていますね・・・。

ASDが非行に直結したわけではなく」とは書いてあるけど、間接的な関係ならあるのか?ほんとうに?

 

「いまだに殺人欲求」の佐世保事件少女 「甘い」家裁処分に地検が異例の「嫌味」 : J-CASTニュース

家裁決定では、少女を重度の自閉症スペクトラム障害ASD)だと認定。少女がASDの「非常に特殊な例」で、ASDが非行に直結したわけではなく周辺環境も影響したとした。

決定後、長崎地検は上保由樹次席検事の名前でコメントを発表している。長崎地検は、記者クラブ加盟社以外にはコメントを公表していないが、産経新聞(7月14日付朝刊)によると、その内容は

「いまだに殺人欲求を抱き続けており、再犯の危険が大きいが、医療(第3種)少年院には最長で26歳までしか収容できない。家庭裁判所もその点を十分に考慮した上で判断されたはずであり、その当否を当庁がコメントする立場にない」

というもの。収容期限後の再犯の可能性について強く警告する異例の内容だ。表面的には「コメントする立場にない」とあるものの、「その点を十分に考慮した上で判断されたはず」の部分が皮肉だとも読めなくはない。朝日新聞によると、「生涯にわたって十分な対応を継続していく必要がある」ともクギをさしたようだ。

 また、2015/07/14付 西日本新聞では、下記のとおり。

長崎県佐世保市の高1同級生殺害事件で医療(第3種)少年院送致となった少女(16)の付添人を務めた弁護団は14日、少女が「二度と罪を犯さないよう、どんな矯正治療でも受けたい」という趣旨の話をしていることを明らかにした。同市内で記者会見した。

弁護団は、少女には重度の共感性障害などがあったことを踏まえ「長崎では過去の少年事件を受けて命の教育が行われているが、少女のように特殊性があれば、命の教育の趣旨が伝わらない可能性がある」と主張。家庭や学校、地域で、同様の問題を抱える子どもの健全な発達を支援する取り組みが行われることが重要だと訴えた。

 

~芋蔓~

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