芋蔓読書

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道元の冒険




井上ひさし氏が亡くなった時(2010年)、そういや全然読んだことないな〜と著作リストを眺めた。
道元にも戯曲にも特段の興味はないのに、これが一番読みたいと思っていて、ようやく読んだ。
・・・って、思い立ってから4年も経ってるのか。
戯曲という形式は全く苦にならず、内容も色々おもしろかったのだが、本編よりも井上ひさし氏本人によるあとがきがよかった!
流れるような名文で、どこを抽出したら伝わるかが分からない。
そうかといって要約すると良さが失われるし、難しいな・・・
あえてなるべく無機的に情報をぬきだすと、

  • カトリック系の孤児院にいたことがあり、洗礼も受ける。
  • 長じてキリスト教関係の大学に行ったが、「大都会の聖職者たちはわたしを微かに失望させ(中略)・・・キリスト教団の脱走兵になってしまった。」
  • 放送作家として道元について調べる機会があったが、正法眼蔵の分からなさに驚く。
  • 正法眼蔵を直接理解するのは無理なので、伝記や入門書など、外堀を埋めていく作戦にした。

やがて、思惑どおり道元がおぼろげに姿を現しはじめたが、その道元は奇態なことに、あの外国の師父たちとよく似ていた。(中略)
あの師父たちの丹精した一枚の菜っ葉は聖書とキリストと教会にまさり、道元のある朝の洗面は古仏の正法に優に匹敵する―宗教は人のことであり、どこかによき人がすくなくともひとりいるなら、今、人間の見ている長い悪夢もやがて醒めることがあるかもしれないと、わたしはまだ宗教とどこかで辛うじてつながっているようだ。

注)師父たち=孤児院の修道士たち


孤児院?と思ってWikipediaを見ると、なんとも波乱に満ちた人生であられたのだなあ。
著者の伝記や自伝も読んでみたい。

閑話休題、この戯曲を読んで内容を理解することは難しくないが、実際にお芝居するとなると、少ない人数の俳優で夢と現実が入り交じる多くの場面、人物をやりくりする複雑な構成で、歌もあり、コント調だったり、実際の舞台はどうだったのか?そもそも実際に演じられたことがあるのか?と何気なく検索すると、今をときめく(?)阿部寛主演で最近演じられ、DVDまで出てた!