芋蔓読書

はてなダイアリーから引っ越しました

明恵上人


白洲 正子 / 講談社 (1992/03)
明恵上人 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)


こちらの河合隼雄明恵上人の夢について書いたものが芋蔓のもとなので、機会があればこれも書こうと思います。
私が実際に読んだ白洲正子版は1974年版(新潮選書)ですが、入手しやすそうなものを。


河合 隼雄 / 講談社 (1995/10)
明恵 夢を生きる (講談社プラスアルファ文庫)


引用されている明恵上人のエピソードはかなり河合隼雄と重複しています。
まあ、あたりまえでしょうが・・・。
河合隼雄は夢、白洲正子は芸術に多くをさいている感じはあります。


では、河合隼雄を読んだときに印象に残った部分でもあるのですが、また引用します。


明恵には彼と我、昔と今の境がまったくない。すき通った精神は、時に肉眼では見えないものまで見てしまったようです。ある時、行法の最中に、突然侍者を呼んで、手水桶に虫が落ちたから、直ちに行って助けるように命じた。侍者が行ってみると、ほんとに蜂が水に落ちて、溺れかけていた。
(中略)
たしかに明恵のような生活をしていれば、透視のようなことも可能だったに違いなく、あながち伝記の修飾とのみいいきれません。


おおー。超能力!
このあと2つほど不思議なこと、奇異な振舞いを引用し、

上人にとって、このようなことは別に「いみじき事」でも、「神変がましき」振舞でもなかった。「自然と知れずして具足せられた」力にすぎない(後略)


そうなのです。
つまり、超能力は自然についてしまう、いわば副作用のようなもので、目的でも手段でもない、という私の考えは明恵上人から思いついたものなのでした。
2007-06-15の記事「空海の夢」参照

(前略)狂人と天才は紙一重などといいたいのではない。外見は紙一重でも、質はまったく違うのです。「邪正問答集」の中で、明恵は次のようにいっています。
弟子が、ある時、「座禅をする人々の中に、気が変になる人がいるが、それは座禅が悪いのでしょうか」とたずねたのに対して、このように答えた。
−たしかにそういうこともないとはいえないが、それは座禅の罪ではない。世事に執着して、気が狂う人は沢山いるのに、世事をうとまないのはおかしいではないか。座禅で気が変になるのは、いささかの見解によって、慢心が生ずるためで、魔がそのすきにつけこむのだ。或いは、過去の罪によって、心の鬼にさいなまれる場合もある。或いはまた、早急に悟りを得ようとあせって、心身ともに疲労するため、血脈が乱れて狂乱することもある。そういう狂乱は、必ず治まる時が来る。治まれば直ちに道心に還れるが、狂乱を怖れて座禅をしない僧は、永劫の地獄に堕ちるであろう。。そうなったら、本物の気ちがいである。座禅の物狂いは怖るるに足りぬ。『物狂ひを見て、座禅を恨む心を怖るべし』(伝記)
むろんここでは自分の体験を語っているのですが、狂乱も怖れなかった所に、彼の健康で強靭な精神が見出せます。


ほお・・・。禅に対して一般に(?)そういう認識があったのか。
私もそのお弟子さんの不安は分かるような気がします。
明恵上人は健康で強靭な精神をおもちだからそういえるのかもしれませんが、私はやっぱり禅にはグルが必要なのではないか、と思っています。
やったこともやろうと思ったこともないけど・・・。


以上は河合隼雄を読んだときにすでに強く印象に残っていた部分ですが、この本を読んで大なる収穫があった!
河合隼雄にもあったのですが、

晩年、彼はこの島へあてて長文の手紙を書きました。


島ですよ!淡路島、とか、佐渡島、とかの。
明恵には彼と我、昔と今の境がまったくない。」というエピソードかもしれないし、冗談かもしれないし、何らかの教訓を読み取るべきなのかもしれませんが、とにかく、その島はとても美しいに違いない!
その島は、「刈藻島」とありました。くさかんむりありの「刈」です。
グーグル様に聞いてもそのときは分からなかったのですが、地図が載っていました!
Amazonを見ると、「紀行エッセイ」とあります。気付かなかった・・・)
和歌山県湯浅湾にありました。近くに海水浴に行ったりしてたところです。
ぜひ行きたいな〜。


Google Map 刈藻島周辺(広川町役場西方の名のない島)
http://maps.google.com/maps?hl=ja&ie=UTF8&oe=UTF-8&q=&ll=34.055504,135.157928&spn=0.119465,0.213203&z=12&om=1

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