芋蔓読書

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サルなりに思い出すことなど


〜芋蔓〜#本のときめきタイトル10選から〜





(10)サルなりに思い出すことなど
タイトルに惹かれて読み、内容もおもしろかった。
タイトルと内容の関係もよい。ユーモアとかなしみ。
元のタイトルは「A Primate's Memoir」、直訳するなれば「ある霊長類の回想録」、原題も訳もよい。


サブタイトルどおり、神経学者が研究対象であるヒヒを追ってアフリカで生活していたときの回想録で、自伝、青春期という要素が強く、研究内容自体はあまり詳しくは語られないが、そっちにも興味を惹かれた。
文章がうまいというか、軽妙洒脱な感じが好みだった。訳のよさなのだろうか。「銀河ヒッチハイク・ガイド」や「これが見納め―― 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景」などのダグラス・アダムスを思い起こさせる。
1970年代〜1990年代の20年間くらいの話なので、どうしてもアフリカ現代史に触れることになる。
「歴史」なんておおげさでなくても、著者のフィールド(どこだっけ・・・)のごく狭い範囲の20年間の社会の変化とそれに伴うヒヒをとりまく自然環境の変化だけを見ていても、それがどういう方向に向かうのかということが、自分の少ない知識と著者の文章のトーンから察せられ、途中から読みすすめるのが辛くなってくる。
神経科学の研究、ヒヒの生態、アフリカの歴史、環境問題などが背景に流れてはいるものの、基本的にはエンターテイメント。
サル学にもアフリカにも興味なくても楽しめると思う。



有言実行、当初の宣言通り、短期集中連載できて満足である。
10個の記事を書くのに1ヶ月近くかかってしまったが、普段のことを思えば十分短期といえるでしょう。
あと1回くらい「ときめきタイトル」について書いて、それで終わりにしたい。


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