芋蔓読書

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芋蔓サイコパス

サイコパスに関連する(と私が思っている)本をいろいろ読んだので、まとめてみよう。

なんとなく気になって読み始めたきっかけは、佐世保の女子高生の事件だったと思う。
事件の概要をどこかから引用しようとしたが、なんかいろいろ差し支えあるかもなので、やめ。2014年7月26日の事件のことです。

サイコパス」という言葉にはいろいろ問題あると思っており、この女子高生が「サイコパス」なのかどうかということは、とりあえずおいといて下さい・・・。


彼女らのような、動機が全く理解できない、殺人自体が目的のように見える殺人事件を起こした人(ここでは「猟奇殺人鬼」としておく)はいったいどんな人で、どんな内面生活を送っているのだろうという疑問から始まって、いろいろ読んでみた。

 

1.銃・悪意の手記・1Q84

銃 (河出文庫) 悪意の手記 (新潮文庫) 1Q84 BOOK 1 1Q84 1-3巻セット

 

「Web本の雑誌」のインタビュー(作家の読書道 第152回:中村文則さん - 作家の読書道)を読んで。

人が嫌いだったし、世の中が好きじゃなかったし、家もよくなかったし何も頼るところがないので、自分の中に神みたいな架空の存在を作って、それと一緒に生きている気分でいました。神戸の連続児童殺傷事件の犯人も自分の中に神を作っていたんですよね。僕は中学に入った頃にその存在が自然と離れていったのでよかったです。彼は14歳までそれでいってしまったから。

 

この2つの小説を読んで、少なくともこの著者は、猟奇殺人的なものと幼少期の経験は因果関係が関係あると思っているんだな、という印象を受けた。

この2冊には猟奇殺人鬼もサイコパスも登場しませんし、そんなことはどこにも書いておらず、あくまで私の受け取り方の問題です。

なんだか理解できないこういう「悪」とでもいうべきものは、長らく文学がテーマとしてきたことで、ドストエフスキーなんかも読むべきなのだろうが、村上春樹にも出てきたように思った。

もっと前に読んだ1Q84には「絶対的な悪人は存在して、そいつはやっつけてもいい」と書いてあるように受け取った。
悪というのはそんなもんなんだろうか・・・と、いずれも釈然としない気持ちになった。

 

2.良心をもたない人たち

良心をもたない人たち (草思社文庫)

 たまたま同じ時期に友達に勧められて読んだ。
サイコパス」というのは「猟奇殺人鬼やその傾向を持つ人」ではなく、「良心をもたいない人」とでもいうべき人たちのことを指す言葉で、そういう傾向のある人は100人に4~5人いるという話(欧米では。アジアはもっと少ないらしい)。
友達のお姉さんが職場の人間関係に悩み、鬱気味になっていたところ、この本を読んで元気を取り戻したとのことである。

 

3.人格障害をめぐる冒険

人格障害をめぐる冒険

 「サイコパス」って、「猟奇殺人鬼」のことじゃなかったのか。
じゃあ、日本語ではなんていうの?と思ったら、「精神病質」とあった。ああ!って感じですね。日本語の「サイコパス」という言葉は、すでに独自の意味をもってしまっていますよね。
現在では「精神病質」という言葉は使われておらず、「人格障害」になるようです。
この本は「人格障害」という言葉の変遷をまとめた本なのですが、amazonでみなさんがレビューされているとおり、おもしろいのは、これが「体験ルポ」風味なところです。

 

4.サイコパスインサイド

サイコパス・インサイド―ある神経科学者の脳の謎への旅

 脳画像診断でサイコパスを判別するような研究をしていた研究者が、認知症か何か別の研究のためにたくさんの脳画像を集めて眺めていたところ、典型的なサイコパスの脳画像に出会った。全ての画像はその脳の持ち主の名前が伏せられているので、「これは誰だ?気の毒に・・・」と思ったら自分だった、という話。
繰り返しになるが、この研究者はサイコパス的傾向をもっていても、殺人鬼ではない。
そうはいっても、これが一番「猟奇殺人鬼」の内面を想像させる。

 

5.平気でうそをつくひとたち

文庫 平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学 (草思社文庫)

20年ほど前に読んだ本だが、今思えば、この「平気でうそをつくひとたち」というのは、上記のサイコパスのことを指しているのだなと思う。
サイコパスなんて言葉は出てこなかったような。

「悪としかいいようのない人」という感じだったと記憶している。

原題は「 People of the Lie: The Hope For Healing Human Evil」。
副題は、「人間の悪を癒やす希望」なのか・・・。

いや~・・・希望はあんまりないな、という感想だった。

 

~芋蔓~

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